定年延長を考える

(2020年5月15日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)

 

国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げる「定年延長改正法案」が、いま永田町の政局のど真ん中にあります。

この法案は、他の法案も含め一括で10本が束ねられて提出されており、そのなかに「検事総長の定年延長」も含まれていることから、注目を浴びる事となりました。

私はこの問題について、「定年延長という人事制度の問題」と「検事総長の人事という個別の人事の問題」に分けて処すべきと考えています。

その際、最も大事なことは人事を公正に行うことです。人事は組織の力を最大限にするために適材適所を目指します。実際、すべての人間が満足する人事はないでしょう。優遇される人もいれば、自らの人事に不満を持つ人もいます。ただ人事が恣意的ではなく、公正に行われると公務員皆んなが信じる人事が大事な事です。

高齢化に伴い、定年の延長は社会の流れです。年金のことを考えれば、高齢化するのに定年が60歳のままでは年金を受給する期間が長くなり、給付額の減少か、負担額の増加を余儀なくされます。受給する年齢を上げれば、やり繰りできます。

他方、雇用の実態を見れば、昔に比べると、60歳どころか70歳でもまだまだ働けるという方は増えています。単に寿命が延びただけではなく、健康で働くことのできる年齢が延びているのです。沖縄のおじいやおばあのことを考えれば普通のことです。まだまだ働けるのに日本の会社では定年で働けない。だから海外の会社で働き、その会社の競争力が向上して、日本の会社が負けてしまうなどということすら起きています。

定年という会社の人事制度を変更することで、年金の問題やまだまだ働けるということに対応できるなら、定年延長はすべきでしょう。60歳から65歳に一挙に定年を延ばすと混乱するので、徐々に計画的に定年を延長していく。これが社会の流れだと思います。

公務員といえども社会の一員、役所も会社と同様、公務員の定年延長という人事制度の変更は必要な措置だと思います。しかし、天下り批判を受けて、中央省庁の公務員が徐々に役所の外に出ることができなくなりました。昔なら外に出ていた者が組織内に残る。ということは年功序列の下、本来なら責任ある地位に就けた者が待たなければならなくなっています。定年延長すれば、若くて力ある人が仕事のできる職に就くのにさらに時間がかかりかねない。

自らの能力が認められず、いつまでも下働きならば、人事が公正でないと思うようになれば、公務員を辞めて、外で働こうということになりかねません。高齢化の下で、定年延長しつつ、年齢にこだわらず、適材適所をいかに実現していくか、人事制度の運用が一層問われると考えています。

黒川東京高等検事長は年齢のために定年延長がないと検事総長になれない、だから検察官法を改正して定年延長するのではないか。

今回の改正法案は検事総長人事にも大きな影響を及ぼすだけに「検察人事に対する政治の介入」という指摘が黒川東京高検長の定年延長をきっかけに国民の間でも広がりを見せている事は間違いありません。

公務員の人事権は、大臣にあります。公務員の辞令には大臣が任命すると書かれています。官邸の機能強化の流れの中で、内閣総理大臣の権限が強まり、中央省庁の幹部の人事のために内閣人事局がおかれました。今も任免権者は大臣ですが、官邸の関与が強まっているのです。しかし、その大臣も総理が任命するのですから、もともと究極的には公務員の人事は内閣総理大臣が権限と責任を有しているものです。

ここでは黒川氏の能力については論じません。私共には本当のことは解らないからです。「黒川高検長の定年延長」自体が、既に法律ではなく、法律の解釈によるを法案採択前に決められています。しかも法律の解釈の変更がいかになされたかを示す文書もないのです。個別の人事について文書は示せなくても、制度の変更については文書がなければならないことから、無理がなされているのではないかと思わざるを得ません。

改正法の本来の趣旨、すなわち「人事制度の問題」と「個別の人事の問題」が別問題である事が明確ならば、この問題は別次元で考えていかなければならないのではないかと思います。

結論としては、法案は法案として、先に申し上げた高齢化の問題からしても「賛成すべき」であります。そして「政治の司法への介入だ」という声を払拭するのであれば、「黒川氏が検事総長を辞退する」という決断が、国民には一番わかりやすいものになるのではないかと思います。

「政治が司法の人事に介入する」

「司法が政治のバランスに介入する」

この両方の指摘は戦後の様々な政治史の出来事としてこれまで何度も何度も歴史に繰り返されてきました。政治の権力闘争においても、上級官僚の人事の決定においても、時の内閣総理大臣が介入をしない事はありません。内閣総理大臣はそんな権力のトップの存在なのです。日本は議院内閣制である以上、内閣総理大臣を決めているのは国民であります。国民が党を選び、その党から内閣総理大臣は選ばれるのです。国民は批判勢力ではなく、政治家を選ぶ勢力なのだと深く認識しなければなりません。

安倍総理の史上最高の長期政権が培った決断力が評価されるか、はたまた史上最高の長期政権の弊害と言われるかが問われる事になるでしょう。

衆議院議員
下地ミキオ

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