(2022年5月27日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
参議院議員の上田清司(前埼玉県知事)氏から、面白いエピソードを聞いたことがあります。
橋下徹大阪府知事(当時)に対し、「橋下さんは“府政”改革はしたけど、“不正”改革はしていない」
と言って、議論になったことがあるというのです。
平成16年までの埼玉県は、刑法犯認知件数で東京都や大阪府に並んで高い数値で推移していたようですが、
上田氏は知事就任後、検挙率を上げるための様々な施策を採り入れ、2年目以降から検挙率が急激に上昇し、認知件数が激減したといいます。
しかしながら、大阪府は認知件数も検挙率もなかなか改善されていなかったことから、上田氏は「とんち」を効かせた表現を使ったのでしょう。
私は、この「とんち」が、沖縄に何かをサジェスチョンしていると考えました。
「米軍人・軍属による事件・事故が沖縄において発生し続けているのは、日米地位協定が抜本改定されないからだ」
よく耳にする言葉です。
日米地位協定の抜本改定という旗を降ろすつもりはありませんが
「地位協定が抜本改定されないから米軍人・軍属による事件・事故が発生する」
という理屈が、説得力をもった政治の対応なのかというと、それは違うと思います。
日本の自衛隊は今、海外で国連PKO活動などを行っていますが、駐留先の現地政府と必ず地位協定を結んでいます。
つまり、日本も相手と地位協定を結び、事件・事故に対する対応についても、日米地位協定同様に定めてあることからしても、
日米地位協定を抜本的に変えるということがスピード感をもってできるかと言えば、できないでしょう。
また、日米協議で変わる内容は核心にたどり着かず、隔靴掻痒であります。
そこで、上田氏が政治家として実行したように、自らで地域を守る防犯体制をつくり上げていくということが大事だと思います。
(1)バス・タクシーなどの公共交通機関をはじめ、運転代行業や運送業の車両に通報システムを導入し、犯罪抑止の役割を担ってもらうこと
(2)コンビニやマチヤグヮー、商店街、信号機、自動販売機等に防犯カメラを設置すること
(3)児童・生徒の登下校時間帯の30分間、地域の企業が1名ずつ出し合い、横断歩道だけではなく必要な場所で児童・生徒を見守ること
(4)警察の機動性と能力を向上させる予算を拡充すること
(5)警察OBと警備会社が連携して、表通りだけではなく、裏通りや灯りの少ない通りなど1000か所以上に、沖縄県がガードマンボックスを設置すること
(6)警察、行政、経済界、地域、ボランティアを巻き込んだ組織を構築すること
過度な監視社会にならないように注意しながらも
米軍人・軍属による殺人、強盗、放火、強制性交等罪などの凶悪事件が600件余発生していることを考えれば、
「米軍人・軍属による犯罪から沖縄県民を守る」ことは政治の役割であり
まずはその体制をつくることが先決で、同時に日米地位協定の抜本改定に取り組むという順序が大事だと思います。
米軍人・軍属による事件・事故の発生責任を相手にだけ求め
「日米地位協定が抜本改定されないからだ」というような嘆きを政治家が言ったところで、被害者が事件前の姿に戻ることはないのです。
とにかく、自らの安全を守るための施策を、自らで実行することが、政治の役割なのです。
上田氏の「とんち」は、沖縄県にそのことを教えてくれているのです。