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歴史を尊重し、歴史に学ぶ

(2023年1月13日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)

“すべての事柄には歴史があり、その歩んできた歴史を尊重しなければならない。これまで通り進める時においても、大きく見直す時においても、歴史を尊重することが大事であり、同時にしっかりと説明責任を果たすことが重要である”

「県管理の下地島空港は、国管理にすべきだ」宮古島を訪問し、下地島空港を視察した自民党国防議員連盟が12日、取材に対して述べた言葉です。

国管理に言及した最大の理由は「台湾海峡有事に備えるため」であることは間違いないと思いますが、3000メートルの滑走路を有する下地島空港が、多様な事態に対応可能であることからも、その発言につながったのでしょう。

しかし、複雑な歴史を持つ下地島空港については、その歴史を紐解きながら、現状と照らし合わせていく丁寧さこそが必要です。

自民党国防議連の発言は、あまりにも荒っぽく、島民感情を逆撫でするようなものであると思います。

世界的に航空需要が伸びる中、 “ジェット機の時代が到来する”との考えの下に、国は昭和43年(1968年)12月、下地島パイロット訓練飛行場構想を発表。

沖縄県においても、宮古島においても、賛成・反対の論議が巻き起こる中、下地島空港は昭和47年(1972年)4月に着工、昭和54年(1979年)7月に開港しました。

その過程の中で、昭和46年(1971年)に琉球政府と日本政府の間で「下地島空港を軍事利用しない」ことを確認した公文書、いわゆる「屋良覚書」が残されました。

開港当初は、多くのパイロットを輩出した下地島空港でしたが、円高が続く中、アメリカでのパイロット養成のほうが安いということから、下地島空港はなかば休眠状態へと追い込まれました。

激しく賛否の渦が巻き起こった下地島空港でしたが、経済効果をだすことができず、国と航空会社は結局、自らのエゴで撤退し、下地島空港暗黒の時代を生み出してしまったのであります。

その後、「このままでは伊良部町が破綻する」という危機感の下、当時の浜川町長、伊良部町議会は、屋良覚書がありながらも、自衛隊誘致を決め、国への要請を行いました。

私は当時、防衛庁での要請に立ち会いましたが、中谷防衛庁長官は屋良覚書を持ち出し、「我々が自ら、下地島空港を自衛隊で活用するとは言えない」という主旨の答えでした。

私たちは、「皆さんと一緒になって沖縄県を説得する」という答えを期待していましたから、この冷たい答えに落胆の色は隠せませんでした。

後日、沖縄県にも同じ要請をしましたが、稲嶺知事は面会すらせず、この構想は立ち消えてしまいました。

当時、自衛隊幹部に対しても、様々な機会を通じて「下地島空港の活用について積極的に発言してくれ」と申し上げました。

しかし彼らの答えは、「制服組が発言することはできない。復帰当時とは違い、自衛隊はいま、県民から80%の支持を得ている。そのような状況のなかで、自衛隊が下地島空港の活用について名乗りを上げれば、今まで培ってきた先輩方の努力が失われる可能性がある」という、消極的なものでありました。

膠着した状態が続くなか、三菱地所株式会社が下地島空港に光を当て、本格的なリゾートの着工が決まったのであります。

下地島空港に素晴らしいターミナルビルを建設し、ホテルを2か所建設着工し、現在、もう1か所着工待ちの状態です。

三菱地所がこの5年間で1000億円近くの投資を行ったことで、「三菱地所が投資をするならば、この地域は本物だ」との声が強まり、あらゆる企業が宮古への投資を始めました。

特に最近では、アイドルグループ嵐のリーダー大野さんがリゾートホテルホテルを開業するというニュースも飛び込んできました。

国は下地島空港を見捨て、安全保障の役割においても検討しませんでしたが、その一方で、宮古の人々は民間の力を最大限活用しながら宮古バブルと呼べるほどの経済の好循環をつくり上げたのです。

自民党の国防族は、島民が下地島空港と歩んできた歴史をしっかりと認識した上で発言しているのでしょうか?

「安保政策のためならば何をやっても良い、というものではありません。歴史を紐解きながら、丁寧に進める心優しさが、安全保障政策には必要なのであります」

国民が支持しない安全保障政策を打ち出すことは、軍国主義そのものであると言わざるを得ないだけに、岸田内閣はもっと丁寧に安全保障政策を進めていかなければ、政権として多大な代償を払うことになると認識すべきです。

そしてまた、沖縄県民が過重に背負っている米軍基地負担を軽減することはせず、沖縄県内の自衛隊基地は増強される現実に、沖縄県のトップリーダーである知事は何をしているのか、首をかしげるばかりです。


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