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日米韓の“対北朝鮮外交”

(2023年7月7日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)

「韓国に、『反日本・反アメリカ・親北朝鮮』の大統領が誕生すれば、朝鮮半島問題は安定する」

「支持率が落ち込んだ政権を浮上させて長期政権を実現するためには、北朝鮮の拉致問題・核問題を解決することだ」

これら2つの言葉は、私が尊敬する亀井静香先生が、政局観を考えた時に話されたものです。

日本政府が先月29日に開いた北朝鮮による拉致問題に関するオンラインの国連シンポジウムで、松野官房長官が講演し、「日本自身が主体的に動き、トップ同士の関係を構築することが極めて重要だ」と言明しました。

この発言は、岸田総理が5月27日、拉致被害者関係の集会で「私自身、わが国自身が主体的に動き、トップ同士の関係を構築していくことが極めて重要」だと語った言葉そのものであります。

私は、この総理と官房長官のコメントから「岸田内閣は拉致問題・核問題にチャレンジして劇的な成果を挙げることで、長期政権への一歩を踏み出したいのだな」と感じました。

政権を浮上させる最大のツールが「外交」だと言われます。吉田茂総理の日米安全保障条約、佐藤栄作総理の沖縄返還、田中角栄総理の日中国交正常化、小泉純一郎総理の北朝鮮訪問、安倍晋三総理の27回にわたるプーチン大統領との首脳会談等、歴代総理は、内政ではなく外交による政権浮上戦略をとってきました。

岸田内閣は、G7広島サミット2023の成果をもって政権を浮上させ、その勢いとともに一気に衆議院を解散し、長期政権を成し遂げるというシナリオに失敗したことで、歴代内閣が成し得なかった朝鮮半島問題の解決に、自らの政権浮上の光明を見出したのではないでしょうか。

いま日米韓は、これまでの歴史のなかで最も一体的な友好関係を維持しています。

日本と韓国の間では、徴用工問題や従軍慰安婦問題が解決の方向へと動き出しています。

また、米国と韓国の間では、今年4月に韓国の尹錫悦大統領が訪米した際に、核を含む戦力で米国が韓国を守る拡大抑止を強化した「ワシントン宣言」を発表し、6月には射程が2500キロの巡航ミサイル「トマホーク」を150発余り搭載できる米海軍の原子力潜水艦ミシガンが釜山に入港しました。

さらに、日本と米国の間においては、日本の防衛予算が2023年から5年間で総額43兆円(従前27兆円の約1.6倍)という規模で計上され、増税をしてまで軍備の増強を図る岸田内閣の決断を、バイデン大統領は力強く支持しています。

このように、日米韓の3カ国が、ここまで友好的な関係を同時期に構築するということは、戦後初といっても過言ではありません。

日米韓の3カ国が、北朝鮮への向き合い方についてお互いに調整し合うことが、政治的に可能となっているのです。

来年には「韓国で総選挙」、「アメリカで大統領選挙」が行われますが、岸田内閣も「衆議院解散総選挙」のタイミングを計っているなかで、三者三様に、自らの思いを成し遂げたいと考えるのは、政治指導者の常であります。

岸田総理もこのタイミングを逃さず、あらゆる要素を駆使して、日米韓3カ国連携の下に、一挙に政権を浮上させたいとの考え方を持っているでしょう。

北朝鮮問題には、大きなリスクが潜んでいる。

そのことを理解しながらも、権力者が目指す到達点は長期政権であり、それは誰にも止められないのです。

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