(2021年12月17日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
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10年に一度の改正を迎えた沖縄振興税制が12月10日、自民・公明両党によって決定され、そして16日の新聞には「沖縄振興計画の期間を10年から5年にする」という記事が出ておりました。
この2つの事柄には政治的な因果関係があります。
「今は、無意味な振興税制を延長し、そして振興計画の期間を5年に設定しておく。
来年の知事選挙後に保守系知事が誕生すれば、あとの5年間を意味のある税制・振興策に変えますよ」という政府のメッセージであります。
私はこれまでも「自民党は必ず期限を5年にし、知事選対策に振興策という餌をつける」と申し上げてきましたが、その通りになったことで「分かり易い政治が行われている」といっても過言ではなくなりました。
これは言い換えれば「県民のための沖縄振興策が、知事選挙のための振興策に変わった」瞬間であったかもしれません。
私の政治の師で、税制・沖縄振興策の神様と呼ばれた山中貞則先生は、天上からこのことをどう見ていらっしゃるのか、想像すれば想像するほど「なにやっとるんだ!自民党!」という怒りの声が私の耳に響きます。
山中先生は、「沖縄振興策と政治は『リンクさせない』のではなく『絡めない』」という哲学をお持ちで、復帰時の屋良朝苗沖縄県知事とも平良良松那覇市長とも、イデオロギーは全く違えども、沖縄の声に耳を傾けて沖縄振興策を前に進めてまいりました。
沖縄振興税制13項目のうち12項目が延長になりましたが、沖縄の未来を創る税制にはなっていません。
“観光地促進形成特区における投資税額控除(法人税)は、8年間で6件しか適用されておらず“、“金融特区における法人税の控除は6年間で約30件ですが、その半分以上が製造業で、特別償却・エンジェル税制については平成27年以降全く使われておりません”。
“発電における石炭税制についても、この税制を延長すること自体がSDGsに合わないものであり、沖縄電力が今後10年間で脱炭素化できるようにするための大胆な税制は創設していません”。
このようにまったく意味のない沖縄振興税制の延長は、沖縄経済を活性化させ、雇用を増やし、所得を倍増させるという考えに相反するものであります。
また、沖縄振興税制の期間を10年から5年に短縮することは、投資家に沖縄への投資を躊躇させることにもなります。
企業家の投資意欲を完全にそぎ取ることになることをわかりながら、それでも知事選挙を見据えて振興策を触ることに、私は納得できません。
「来年、保守系知事が生まれていれば、もっと大胆なことをしてあげるからね」そんな振興策はいりません。
またここで、玉城デニー知事がどのような態度を見せるのか、私は注目しております。沖縄振興計画は沖縄県知事が策定し、総理大臣へ提出することになっているだけに、「このように沖縄を馬鹿にされた中では振興計画は提出しない」というような強い意思が示せるのかどうか。
沖縄県民の代表として「馬鹿にされたら怒る」「馬鹿にされたら戦う」「馬鹿にされたら対案を提案する」これを知事が実行できるかどうかに、沖縄の未来がかかっています。
普天間基地の辺野古移設には反対するが、沖縄振興策では政府案に従うということでは、政治的な沖縄の立場を自ら放棄したことになります。
政府がすべてを決断するのは来週になるかと思いますが、「沖縄振興予算3000億円以下」、「無意味な沖縄振興税制」、「投資意欲を失くす5年期限」に対してどんな戦いをしてくれるのかに注目しましょう。